空間と時間と次元

そんなことありえない、ということが真実、ということは割とよくあります。人間の経験、想像力などその程度ということなのでしょう。

探偵活動は厳密な科学であり、または、そうであるべきであり、同じ冷徹さで進められなければならない。

不可能を消去した時、そこに残ったものは、たとえ信じ難いことであっても、真実に違いない。

シャーロック・ホームズ「緑柱石の宝冠」
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当たり前のものが真実とは限らない

かつて、地球は動かず、天にある太陽や月、星々がすべて地球を中心として動いているという天動説が信じられていました。

天動説を信じている人たちは、地球がコマのように高速で回転しながら太陽の周りを回っているのであれば、目が回るし、地上にはすごい風が吹き荒れているはずで、我々は皆吹き飛んでしまうだろう、と地動説をバカにさえしていました。

今日の私たちは、地球の方が動いている地動説を当たり前としています。しかし、天動説が当たり前の時代があったのです。

「見ているから信じられる」、裏を返せば「見えないものは信じられない」というのは本当でしょうか。見ているのに見えていない、ということは実際にはあまりに多いです。

ニュートンが万有引力の法則を発見する以前より、月やリンゴをたくさんの人が見ていました。多くの人が月やリンゴを見ていましたが、引力は見えていませんでした。

確かに引力は目には見えません。しかし、確かに存在しています。ニュートンには引力が見えました。

実際のところ、「信じるから真実が見える」というのが正しいのだと思います。

ガリレオは地球が動いていると信じたから地動説を理解できました。天が動いていると信じているうちは、地球の方が動いているなどとても考えられず、地動説は1ミリも理解できなかったのだと思います。

2次元空間の住人

私たちは、3次空間+1次元の世界に住んでいます。縦、横、高さの寸法軸の3つの次元と時間軸の合計4つです。

このうち、時間は一方的に流れて行くので、逆戻りはできません。

しかし、この4つの次元は関連性があり、それはアインシュタインの相対性理論で明らかにされました。

ここで、2次元空間の世界、つまり、縦と横しかなく、高さがない、平面の世界に住む住人を考えてみたいと思います。

2次元空間の世界の住人は、障害物があったとしたら、それを避けるためには、左右のどちらかに避けるしかありません。飛び越えることなど、高さの概念がもともとないので考えることすらできません。

高さの次元がそもそも存在しないのだから、飛び越えることなど、それこそ瞬間移動、ワープすることと同じと思ってしまうでしょう。ところが、3次元に住む私たちは、そんなもの、またいで通ってしまえばいい、と考えることができます。

3次元空間+時間軸の4次元に住む私たちも、この2次元の住人と同じ立場にいると考えなければなりません。

私たちがいる世界を、より高次元の世界から見たら、私たちも2次元の住人と同じに見えると思います。

認識できないから存在しない、とはいえないのです。

自分の目で直接自分の顔を見ることはできない

自分の目で直接自分の顔を見ることはできません。

鏡などの何かの反射物を使うなど、間接的な方法でしか見ることはできません。

古来より、姿を写すものとして鏡が使われてきましたが、鏡に写った自分は他人から見た自分ではありません。日々、鏡を見て化粧をしたり、身だしなみを整えると思いますが、その姿は他人から見たものとは違います。

というのも、鏡で見た姿は左右が逆転しているからです。写真を見たときに、違和感を感じるのは、鏡で見ている自分と左右反転しているからです。

人間の顔や身体は、完全な左右対称ではありません。顔の右側のコピーを反転させて作った顔は、当人とは微妙に違います。口が歪んでいたりしたらなおさらです。

ちなみに、現在の自分を見ることは不可能です。というのも、光が鏡に到達して、鏡から目に入るまでにはたとえ短い時間であっても、時間の経過があるからです。鏡に写った自分は、0.00000000001秒前であっても、過去の自分です。

太陽の光は、地球到達まで約8分前かかります。もしかしたら今現在、太陽はないかもしれません。

ブラックホールはなぜ黒いのか

ブラックホールはなぜ黒いのか。という質問に対する答えとして、光が吸い込まれるから、という解説がなされることがありあますが、これは正しくありません。

光はあくまで直進しようとします。ブラックホール周辺では強力な重力によって空間が歪んでいますので、その歪んだ空間を光は直進します。空間の歪みが大きくなると、やがて円の中をぐるぐる回るようになり、脱出は不可能になります。この脱出できる限界円の半径がシュバルツシルト半径といわれるものです。

地球上で、たとえ真っ直ぐ歩いたとしても、やがて出発地点に戻ってしまうのと似ています。

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