宇宙ごみ除去はビジネスになるか

アストロHD、120億円で宇宙ごみ除去へ JAXAから受注

アストロスケールホールディングス(HD)は19日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)からスペースデブリ(宇宙ごみ)の除去の実証事業を120億円で受注したと発表した。2029年3月末までに宇宙に漂うデブリを同社の人工衛星で捕獲し、軌道上から離脱させる。デブリは国際的にも問題視されており、同社の除去サービスの実用化に弾みがつく。

2024年8月19日 日本経済新聞

アストロスケール、宇宙ごみの周りを1周 世界初

アストロスケールは30日、同社の人工衛星がスペースデブリ(宇宙ごみ)の周りを1周したと発表した。同社によると、本物のデブリの周囲を飛行するのは世界初という。一定の距離を保ちながらデブリの周りを飛行する技術を今後のデブリ除去サービスの提供に生かす。

デブリは2009年に打ち上げられた日本の「H2A」ロケットの残骸。24年2月に打ち上げた人工衛星が7月、デブリから約50メートルの距離を維持しつつ1周し、連続撮影することに成功した。

2024年7月30日 日本経済新聞

宇宙ごみの発生源はいろいろです。使われなくなった人工衛星や切り離して地球に落下しなかったロケットの残骸、自分で爆発したり、他の衛星や宇宙ごみと衝突してバラバラになったものなど、多種多様です。

深刻なのが、このような宇宙ごみが宇宙を漂い続けて、他の衛星とぶつかることでさらにゴミが増えてしまうことです。衛星軌道は飛行機の航路と同じで、だいたい使うルートが決まっています。つまり、使っている衛星とゴミの軌道はほぼ同じということになります。

ゴミが増えれば衝突リスクが増えますので、加速度的にゴミが増えてしまい、放置すればいずれ衛星を打ち上げることができなくなってしまいます。

軌道上の物体は、基本的に米国宇宙戦略軍(USSTRATCOM)が監視しており、低軌道上で約10cm以上、静止軌道上で約1m以上の物体はすべてカタログ化されています。また、ESAのスペースデブリ事務局(ESOC)でも、スペースデブリの監視とシミュレーションによる予測を行っています。それらのカタログによると、2023年12月時点で観測されている軌道上物体は約35,150個。1cm以上では100万個、1mm以上は1.3億個以上と推定されています。

軌道上の物体は浮遊しているわけではなく、速度を持って周回しています。7〜8km/s程度で周回している場合、2つの物体が衝突する際の衝突速度は10〜15km/s。これは、ライフル銃の弾丸のスピードが1km/sであることを考えると、その10倍ものスピードで衝突することになります。

そのため、たとえ1mm程度のスペースデブリであったとしても、当たりどころが悪ければ運用中の衛星の故障、1cm以上の宇宙ごみの場合、ミッション終了につながる致命的な破壊となる可能性があります。

Tellus「宙畑」より「深刻化する「宇宙ごみ」問題〜スペースデブリの現状と今後の対策、各国の動向と活躍する民間企業〜」

そのため、この宇宙ごみを取り除こうということで活動しているのが、アストロスケールという会社です。

しかし、このデブリ除去がビジネスになるかというとまだ不透明と言わざるを得ません。この地上でも、ゴミがビジネスになるのは限られています(価値のあるもの、リサイクルできるものと、法律で強制されるもの)。

ゴミ問題というのは世界中の課題になっています。捨てるもの、捨てたものに追加でお金を払うということは基本的にしないからです。宇宙ごみもまさにそうで、ゴミが増えるのは困るが、だからといって、積極的に誰かが大金を払って掃除をしてくれるかというと、それもありません。得にならないからですね。

自分の打ち上げる軌道上の掃除をしたとしても、その軌道は他の人も使います。つまり、他の人はただ乗りできるわけです。「フリーライダー」問題がここでも出てきます。

なので、軌道上の人たちからゴミ掃除代を徴収するのが公平ということになりますが、それも難しそうです。打ち上げ費用に含めるということになるのでしょうが、各国(特に中国やロシア)で勝手に打ち上げられてしまうとその回収はどうするのか、という問題が発生します。自分たちは払わない、と言われても、どうやって強制的に徴収するか、その方法論が見つかりません。

地球環境を守ろう、温暖化を防ごうと国際会議を開いても、各国の利害対立が続いています。宇宙も同じ状況になると思います。

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