早すぎた衛星通信開発

スウェーデンのエリクソンなど、衛星とスマホを直接繋ぐ技術を開発し、地球上のどこででもネットに接続できるインフラ整備が進んでいます。

エアバスが通信衛星事業を立ち上げ、2024年末までに商業運用を開始する予定だそうです。

すでに、スペースXの「Starlink」がスマホで衛星通信ができるようになっています。

しかし、この衛星通信事業の構想といえば、壮大な失敗をした、モトローラのイリジウム計画を思い出す人も多いと思います。

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イリジウム計画とは

1990年代初めに始まったモトローラのイリジウム計画は、事業の失敗事例として、経営本に頻繁に出てきます。

構想は良かったのですが、早すぎたゆえに失敗したと言われています。

全世界をカバーするために、当初は、77個の人工衛星を打ち上げる予定でした。原子番号77のイリジウムにちなんで名付けられた計画でしたが、資金面の問題から、実際には66個になりました。

発端は、モトローラの重役夫人のちょっとした一言でした。カリブ海でバカンスを楽しんでいたところ、「どこでも使える携帯があれば」、という一言からプロジェクトがスタートしたと言われています。

確かに、地球上のどこででも電話がつながれば大変便利です。

現在、ほぼそのような状況で生活しているので、当たり前に感じますが、1990年代初めにはまだインターネットも普及していませんでした。その時代に生きていたはずなのに、待ち合わせはどうしていただろう、と思い出すのが困難になるほど、携帯電話、スマホに依存した生活にどっぷりと浸かっています。

「エベレストの頂上からでも電話ができる」と言われても、では、エベレストの頂上に登るのは果たして何人いるのか、という事業的な視点を欠いていた面もありました。

あまりにも莫大な投資がかかったため、携帯機器の購入費用(しかも大型で重い)、通話料金も大変高額となり、十分な顧客を得ることができず、莫大な損失を出して撤退をせざるを得なくなりました。わずか5万人ほどしか顧客が得られなかったそうです。これでは投資を回収することは困難でしょう。

要するに、顧客不在の開発だったということに尽きますが、これはよく起きます。理想は大変良いのですが、それを実現するためには、莫大なコストがかかる、技術がまだそこまで進んでいない、といったことで断念することはよくあります。

作ったのはいいけれども売れなかったということも、よくあります。答えは単純で、高すぎる、ということが多いですが、作った本人は、これだけのコストがかかったのだから、このくらいの価格は当然、と考えがちです。これが値決めの難しいところですが、この価格で果たして買ってもらえるだろうか、と一度立ち止まって、冷静に考えることが大切です。

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