コンサル会社に事業の手綱を握らせたのがそもそもの間違いです。
即時性のある黒字化の手法は粉飾くらいしかありません。鉛筆舐め舐め、数字を書き換えるだけですから。しかし、プロルート丸光は上場企業ですから、監査法人の監査が入ります。事業の実態がないのに、なぜ粉飾が見抜けなかったのか、不思議ですね。
たたき上げ社長の焦り プロルート粉飾事件
「自分の代で潰すわけにはいかない」。創業家一族が100年以上経営してきた衣料品卸のトップに、初めてたたき上げで就いた元社長(63)は苦境に悩んでいた。すがったのは外部のコンサルタントが持ちかけてきた「粉飾」。証券市場の公正をゆがめる禁じ手に走った老舗の破綻劇に、窮地で視野が狭くなった経営者の焦燥が浮かぶ。
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だが、新型コロナウイルス禍の営業自粛と個人消費の落ち込みが追い打ちをかける。19年3月期〜20年3月期は連続で連結赤字に沈み、翌期も黒字転換の見通しは立っていなかった。銀行から融資の打ち切りを示唆され、絶望の淵に立たされた元社長は、18年から会社が契約していたコンサル会社の男(46)を頼った。
大手証券会社出身の男は新たな収益源として、ネット上のプラットフォームで衣料品を卸す新規事業を発案する。元社長がシステム開発の資金繰りが苦しいと相談すると、調達のために第三者割当増資を提案。自らが経営するコンサル会社がプロルート社の全株式の2割近くを取得し、筆頭株主となった。
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元社長は何度か違和感を覚えたという。男はイベント会社を含む知人の複数の会社を駆使し、売り上げを計上する会社や売り上げの中身を簡単に変えることがあった。20年6月、決算の締め日直前に第1四半期の連結営業損益が赤字になりそうだと伝えると、男はコロナ関連のコンサル業務として追加の売り上げが立つと話した。監査上の問題があると指摘されると、スポーツマネジメント関連に変更した。
「業務実態がないのではないか」。元社長は疑念を抱きつつ、コロナ禍に扱い始めた検査キットの在庫や売れ残った衣料品を男が関わる別の会社などに販売したことにして売り上げを計上。営業損益を約6900万円の赤字から約6300万円の黒字に偽った有価証券報告書を提出した。終値が100円台だったプロルート社の株価は200円台に上昇し、男のコンサル会社は値上がりした株式の大半を売却した。
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元社長が粉飾に手を染めてまで残そうとしたプロルート社は事件後に会社更生手続きの開始を申し立て、上場廃止となった。事件で取引は減ったが、残った従業員たちが謝罪と信頼回復に奔走し、スポンサー無しで「自主再建」する方針を打ち出した。7月に「ルートスタイル」に改称し再出発。元社長が頼るべきは外部のコンサルではなく部下や従業員たちだったのだろう。
2024年10月4日 日本経済新聞
監査報告書を見ると、署名が1人だけなんですね。公認会計士2人が連名で署名するのが普通です。
連結貸借対照表上の「のれん」は、2020年3月に登場し、321百万円計上され、2021年3月に289百万円、2022年3月に433百万円にまで膨らんでいます。
連結損益計算書上の最終損益は、2019年3月に△646百万円、2020年3月に△1,191百万円でしたが、2021年3月に14百万円と黒字に、2022年3月に△601百万円とアップダウンが激しいです。
これだけ見ても、監査上かなりのリスクがあることが分かります。
プロルート丸光、最終赤字13億円 監査法人が意見不表明
衣料品卸のプロルート丸光が20日発表した2023年3月期の連結決算は、最終損益が13億円の赤字(前の期は9億6100万円の赤字)だった。エンターテインメント子会社で代表の辞任に伴い事業継続が困難と判断したことによるのれんの減損損失や不正受給していた雇用調整助成金の返還損などで4億7000万円の特別損失を計上した。
同日、なぎさ監査法人(大阪市)から23年3月期の連結財務諸表などに監査意見を表明しないとする監査報告書を受け取ったと発表した。辞任したエンタメ子会社代表への聞き取りが困難で「十分かつ適切な監査証拠を入手することができず、連結財務諸表に重要な修正が必要かどうかについて判断できなかった」としている。
2023年7月20日 日本経済新聞