社長の在任期間は長いとよくないらしい

“America’s bosses just won’t quit. That could spell trouble”

アメリカのボスは辞めない。

The Economist Sep 4th 2023

どこの国も、トップの座を自ら降りる、潔く権力を手放す、というのは難しいようです。

アメリカでは、トップの交代を先送りしている企業が増えているとのこと。

最長は、バークシャー・ハザウェイ社のウォーレン・フェット氏。在任期間は53年だそうです。JPモルガン・チェース銀行やAdobe、ヒルトンホテルのCEOたちのように在任期間が前任者を超えている事例も。S&P500のCEOの平均在任期間はこの10年で6年から7年に延び、中には晩節を汚した経営者もいるようです。

スターバックスの創業者、ハワード・シュルツ氏は、今年の3月に3回目のCEOを辞めたそうです。ウォルト・ディズニーのアイガー氏も2022年11月、後継者に指名したチャペック氏と交代しCEOに返り咲いています。

日本でも、似たようなケースがありますね。後継者に譲ったかのように見えて、辞めさせてまた返り咲いた、というパターン。やはり目立つのは、ファーストリテイリング(ユニクロ)やニデック(旧日本電産)あたりでしょうか。

もちろん、有能な経営者が会社を引っ張るべきだとは思いますが、あまりにも長くなると弊害も出てくるようです。

コロンビア大学経営大学院のドナルド・ハンブリック氏とグレゴリー・フクトミ氏が発表した論文によると、「就任当初の数年間は、会社の事業内容の把握や仕事のコツなどを覚えていく効果によって業績が良くなっていくが、徐々に変化を嫌ったり仕事への情熱が薄れたりして業績が低下してしまう」とのこと。

2015年のボストン大のブロシェ教授らの論文でも、CEO就任当初の約10年は業績が右肩上がりだが、その後横ばい、15年以降は下り坂に転じる、とのことです。

これは、さもありなん、という印象です。仕事を始めた段階では、段々と情報が蓄積され、またエネルギーもあるので奮闘したりすることによって業績は良くなっていきますが、そのうち、マンネリ化していき、また今までの成功体験を捨てられず、新しいことをして失敗したらという恐怖も手伝って、変化を嫌うようになります。同じことをやり続ける方が楽だから、というのもあると思います。

かつて、名経営者と言われたゼネラル・エレクトリック社のジャック・ウェルチ氏にしても、後継者選びに6年もかけたようですが、このようなやり方は賢明ではないとの意見です。

また、CEO交代で最も重要なのが、CEOを退いたら経営からキッパリと手を引くこと。退任後も会社に居座り続けることは後継者にとってマイナスで、最も厄介なのが、退任後に「executive chairman(日本でいう、会長、最高顧問といったところか)」という肩書きで会社に残るケースだそうです。これについては耳が痛い経営者は非常に多いと思います。

オリックスの宮内氏の「シニア・チェアマン」というのもよくわからない肩書きです。他にも、取締役会長、最高顧問、などの役職はまだまだ日本に残っています。日本の閉塞感がなかなか解消されない原因のひとつと言えそうです。

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