NVIDIA一強の弊害

機械学習には、マシンパワーが必要になります。中でも、重要なのがGPUとストレージ容量です。

GPUはグラフィックに使われますが、高速に大量の並列計算を行うことが得意なので、機械学習に適しています。機械学習では、単純な並列計算を大量に実行しますので、これはGPUが得意とするところです。

このGPUですが、現在では、NVIDIA一強という状況になっています。機械学習で使われるライブラリの多くがNVIDIAを前提として作られているところがあります。

わたしはMacBook Pro M1を使っているので、Apple SiliconのGPUを使っていますが、やはり制約を感じます。

NVIDIAはもともとゲーム用のGPUを開発していました。

ビットコインのマイニングで大量の計算が必要となることからNVIDIAのグラフィックボードも一時期品薄になっていましたが、今は沈静化しているようです。

ゲーム用としてはGeForce、ハイエンドサーバー用にはTeslaというラインナップですが、問題はその価格です。GeForceはゲーム用として主に個人が使いますので数万円台からになりますが、Teslaは桁が変わります。

このGeForceをデータセンターで使用することが規約により禁止されてしまいました。

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データセンターでのGeForce使用を禁止

ある製品を購入したら、どのように使うかは法律に反しない限り基本的に自由だと思います。コーヒーカップを購入したとして、自分で使うのは良いが、お店で使うのはダメ、ということはないと思います。どのように使うかまで制限される、という経験はあまりないと思います。

ところが、NVIDIAはこの制限をかけました。GeForceをデータセンターで使用することを禁止したのです。NVIDIAの理屈としては、GeForceは廉価版であり、データセンター用には作っていないため、より上位のTeslaを使うように、ということのようです。確かに、データセンターで使う場合、信頼性が必要ですので、データセンター用に作ったTeslaがあるのですから、それを使ってね、ということはごもっともです。

しかし、例えば、会社や大学などで機械学習の研究用として小規模なデータセンターでGeForceを使う場合にまで制限されるとなると困るのではないか、と思います。小規模な予算でとりあえず初めてみたい、というニーズはあるはずなのですが、それができなくなってしまいます。スタンドアローンとして1台で使うのであれば良いのかもしれませんが、そのPCでしか使えません。これは大変不便です。

使い方を制限されるというものでは、著作物があります。個人鑑賞はOKだけど、お店や会社で使ったり、引用する場合には厳しい制限があります。会計士のデューデリなどの報告書も会社限りという制限があります。

今回の件は、これらの著作物の使用制限とは違うのですが、用途が違うので、その用途以外では使わないで、という規約はもう少し柔軟さがあっても良いと思います。

これも、事実上NVIDIA1社しかない、ということが問題でもあります。他にもあれば、それを使えばよいだけなのですが、NVIDIAしかないとなると、言うことを聞くしかありません。独占の弊害ですが、深層学習は今や重要な分野ですので、他にも有力なGPU開発会社が出てきて欲しいものです。

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