電池依存の常識を疑え モビリティーの未来
堀洋一・東京理科大学教授
2024年3月27日 日本経済新聞
確かに、今のリチウム電池は問題だらけです。
- エコではない
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バッテリー自体がそもそもクリーンでも、脱炭素でもありません。また、ガソリンの場合は使用するにつれて自動車の重量は軽くなりますが、電気自動車の場合はバッテリーの分重量が嵩みます。タイヤの減りも減り、道路の痛みが激しくなりますので(ぶつかった時の衝撃も大きくなる)、自動車重量税はむしろ重くすべきですが、逆に優遇されており、この制度はおかしいとも言われています。
- 地政学リスク
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リチウムやコバルトなどのレアメタルを安定的に入手できる保証がない。
- 廃棄できない
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どう捨てたら良いかのルールが不明確で、ゴミ処理場でのトラブルが多発。
- 火災と感電のリスク
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しばしば、火災の原因になっています。しかも、いったん火災になると感電の恐れもあり、消火の妨げになります。電気自動車で火災が起きたら安易に助けに行くことは大変危険で、助けに入った人の命も危険に晒されます。
ではどうすれば良いか。その答えの一つが、そもそも電池に頼らない、という発想で、それが走行中に給電する、というもの。今の電車と同じで、電気の供給を受けながら走ることができれば、電池に頼る必要がありません。もちろん、停電になるリスクがありますから、最低限自走できる分のバッテリーは必要ですが、その程度であればコンパクトになるでしょう。
戦後すぐの日本でも、架線からの給電で走行するバス(トロリーバス)がありましたが、あれと同じ発想ですね。
でも、このような議論を聞くと、改めて人間を含めた生物の仕組みはすごい、と思わされます。自分でエネルギーを補給し、何日も食べなくても動くことができます。