『企業会計』財務諸表の開示と企業経営

目次

自分の価値はいくら?人的資本の開示

そらかぜ

ぼくの価値っていくらだろう?

会社は単なる器であって、動かしているのは人です。人材ではなく、人財と表現する人もいます。確かに人は財産です。

でも今までは、どちらかというと、人を資産としてではなく、コストとして見てきた面があります。

財務諸表にも、コストとしての人件費はありますが、貸借対照表には人は資産として計上されません。

以前、「もし、自分が貸借対照表の流動資産に載ったら嫌だね」、と冗談をよく言っていました。

人は財産なのに、資産には計上されていません。資産に計上するとして、まず問題になるのは、では一体いくらで計上するか、金額が問題になります。自分で作り上げた評判やノウハウ、ネットワークなど目に見えない資産、つまり自己創設のれんが果たしていくらなのか、具体的にわからないように、要するにいくらの価値があるのか、はっきり分かるわけではないことがネックになります。

もし評価できたとして、自分が会社の資産に計上された場合、同僚が100万円なのに自分は1万円で評価されていたらショックですね。

「適時開示」で日本企業に見劣り

「適時開示 日本企業見劣り」「規則の細かさ、足かせに」(2022.6.10日本経済新聞)

規則さえ守っていれば安心、という心理がどうしても働きます。開示する文言についても、他社はどのように書いているか、と他社事例を参考にするので、横並びになりがちです。

経営や会計の世界でも、「海外では」と海外がやっているから日本もやるべき、という意見が出たり、医療の分野でも海外で承認されていれば安心、といったように、とにかく、先頭を切りたくない心理が蔓延しているように思います。

四半期報告書の廃止

決算短信、有価証券報告書・四半期報告書、会社法決算書、同じようで違う財務資料。決算短信は取引所、有価証券報告書・四半期報告書は金融庁、会社法決算書は法務省、と管轄が違い、それぞれ目的が違うから、ということになっていますが、財務情報の開示が統一されれば、企業の負担も減ることはもちろん、受け取る側にとっても大きなメリットになります。

さらに会社法決算書との統一にも踏み込んでもらいたいですね。

金融庁は18日に開く金融審議会で、上場企業が四半期ごとに開示する決算書類の一本化に向けた議論を始める。(2022年4月17日 日本経済新聞)

ROE経営

100%自己資本なら自分の思い通りにできますが、そうでない場合には、リターンを要求されます。

特に上場している株式会社の場合、株主からいかに投資したお金を効率的に増やしたか、厳しくチェックされます。いくつか指標がありますが、その中でもROE(自己資本利益率)が注目されます。

しかし、このROEには大きな欠点があります。借入金を増やして、レバレッジを効かせることで大きくすることができます。つまり、借金すればするほどよい、ということになります。というのも、この指標は、利益を自己資本で割ったものなので、ROEを大きくしようと思ったら、自己資本を小さくするのが手っ取り早い。利益を増やすのは大変ですからね。といっても、手持ちの資金が必要になりますから、自己資本が少なければ当然借入れをしなければなりません。

つまり、ROEを極限まで増やそうと思ったら、資金のほとんどを借入金にすれば良い、という極端なことにもなりかねません。ROEを重視するととんでも事態を招いてしまいます。

また、投資してから利益を出すまでに時間がかかる事業がやりにくくなる、ということもあります。資本を投下したのに、なかなか利益が出ない、となると長期間ROEは悪いままです。なので、短期思考に陥りやすいとも言われています。

なので、自分の事業の目的はそもそも何なのか、きちんと整理して、投資家にも丁寧に説明し、理解を得る努力をしないと間違った方向に舵を切ってしまいます。

目次