組織の課題と変革の方向性(4) 合理的行動が招く敗北
埼玉大学准教授 宇田川元一
経営戦略論研究者であるロバート・A・バーゲルマンは、米インテルの研究で知られます。同社が半導体メモリーのDRAMメーカーから、CPU(中央演算処理装置)メーカーへと大きく戦略転換した過程と、その後にCPU事業から抜け出せなくなった問題を研究しています。
2024年4月18日 日本経済新聞
「イノベーションのジレンマ」と呼ばれるもので、製造業に限らず、成功したものなら何にでも当てはまる事象です。
今、コストプッシュインフレで100円ショップが苦境に陥っていますが、これも同じ構図だと思います。最初は100円は安かろう悪かろうでも、「100円だから」と許されていた面がありますが、今は大手ブランドの商品もあり、「100円でこの品質はすごい」というレベルです。こうなってしまうと、今度はその品質レベルが当たり前になってしまいます。100円ショップと銘打っている以上、100円という縛りがあるため、値上げは難しい(といっても、今は100円以上で売っているものもありますが)ですが、コスト上昇により製造が難しくなってくる。苦肉の策として内容量を減らすというステルス値上げをするしかなくなってきますが、それも難しい場合には廃盤、ということになってしまいます。それが今の100円ショップの置かれた状況と思います。
といっても、まだまだ100円ショップには頑張って欲しいです。
サービス業も同じで、差別化を進めた結果、過剰サービスとなってしまっているところが多い。今は人手不足や人件費アップで同じサービスをキープすることが難しくなっています。
値段を上げられない中で競争し、商品やサービスを磨き上げた結果、苦境に陥ってしまう、というのは何とも皮肉としか言いようがありません。
俳優も似た面があって、ある役で当たってしまうとそのイメージが付き纏ってしまい、他の役ができなくなってしまう、という役者は多いです。