評価の公平性は信用問題

そらかぜ

この前、評価が高かったから食べに行ってみたけど、それほどでもなかった・・・

最近、口コミがますます当てにならなくなってきました。実際に行ってみたり、買ってみないと、本当のところは分かりません。

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「食べログ」に賠償命令

これは、わたしたち公認会計士も無関係ではない問題です。信用調査会社も同様です。

というのも、これは評価の公平性の問題だからです。

カネを払えば評価を上げる、というのはそもそも論外なのですが、ある時点で突然評価基準を変更してしまうのも問題です。

昨日まで評価が5だったのに、何もしていないのに今日になったら突然2になっていたら、びっくりするでしょう。激変緩和が必要でしょうし、なぜロジックを変える必要があるのか、納得いただける説明をしていればここまでこじれることはなかったように思います。

ただし、評価基準を機械学習で行なっている場合は説明が難しくなります。中身がほぼブラックボックス状態なので、なぜ変わるのか説明できないことがほとんどだからです。

これが機械学習の怖いところで、そういう結果になってしまった、としか言いようがなく、これが過度に機械学習に依存することのリスクになります。企業評価などに機械学習を使う場合には要注意です。「なぜこの評価額なのですか」、と聞かれて、「いやー、コンピュータが勝手に計算しているので、なぜそうなったのか分かりません」では、専門家としての能力を疑われてしまいます。

もっとも、評価のアルゴリズムをすべて公開してしまうと、どのように攻略すれば評価を上げることができるかわかってしまうので、透明性がありすぎるのも問題になります。

公認会計士の監査では、重要性の基準値が当てはまるのではないかと思います。

監査は1円単位で判断するのではなく、投資判断に影響を与えるほどの金額かどうかで判断します。例えば、利益が1億円あったとして、その金額が1万円間違っていたとして、投資判断に影響があるかといえば、まずありません。誤差の範囲です。

そのため、監査で1万円のミスが見付かったとしても、修正をパスします。1億円が1億1万円になったところで大勢に影響がないからです。

仮にこの基準値を会社に知られてしまうと、その基準値内であれば修正がパスされるとわかってしまうので、不正を行おうとしたらその基準値内に収めてしまおう、とするでしょう。このように悪用されることがあるので、評価基準を公開することができない場合があるわけです。だからといって、一切説明できない、では不信感を持たれますから、細かいロジックは公開できなくても、ある程度納得できる説明は必要になります。

いずれにせよ、なぜそうなるのか、ロジックを変えるのであればその必要性について、丁寧な説明が必要ということだと思います。丁寧な説明なしに頭ごなしに強引にやってしまうとこじれてしまいます。

メディアと監査法人

メディアと監査法人は似ている点があります。

どちらも中立性が問われる立場ですが、意見を言うべき相手から報酬をもらっていながら、なお中立性が求められるという難しい立ち位置にあります。

テレビの場合、放送倫理委員会や総務省の監督がありますが、新聞や雑誌、さらにネットになるとほとんどフリーハンドではないかと思います。問題があれば、名誉毀損で訴えるしか方法がないのが現状ではないかと思います。

これに対して、監査法人は公認会計士協会のレビューや金融庁検査があり、自由度がほとんどありません。

メディアの場合は、中立性が保てていないからといって即業務停止になるわけではありません。「報道の自由」という錦の旗で守られていますので、報道しない自由もあります。

そのため、中立性が保たれているのか、外から判断することは非常に難しいです。メディアは、企業などから広告費を取っていますが、果たして広告主に対して中立な立場で意見が言えているのか。都合の悪いことは報道せず無かったことにしていないか。

監査法人は報酬を監査される立場の企業からいただいているので、あまり厳しく監査できないのではないか、という疑念が常に生じます。

そのため、ある企業からの報酬に依存しすぎていないか、馴れ合いが生じないようにローテーションを組むなど、厳しいルールが定められ、さらに日本公認会計士協会や金融庁から定期的にチェックを受けています。そうしないと、監査の質が担保できていないのではないか、という疑念を払拭できないからです。

どちらも、信用が大切な職業ではありますが、かすみを食べて生きているわけではなく、収入が絶対に必要です。ですが、中立を保つことで信用を守らないと、その職業が成り立たない、というジレンマがあります。

中立を守るべき対象から報酬を頂きながら、なお中立を保たないといけない、という難しい立場にいて、中立が保てないと信用を失う、という点で両者は似ていると思います。

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