過度な節税指南に待った 会計士倫理の国際組織が新基準
企業の行き過ぎた租税回避行動を減らすため、会計士の倫理基準を開発する国際組織が動く。税負担計画(タックスプランニング)の策定を支援する会計士向けの倫理基準を開発し2025年7月から適用する。法令順守のほか、その節税策が企業の評判を落とさないかといった社会的な影響まで考慮するよう求める。
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海外主要国では会計士が会計監査と税務支援の両方を手がけるが、日本では税務支援は税理士が担う。ディアス議長は「各国当局には『会計士』という肩書の有無に関わらずタックスプランニング支援者に我々の基準を使ってほしい」と呼びかけた。
2024年6月26日 日本経済新聞
この会計士の倫理基準は、ちょっと違和感のある内容です。なので、「各国当局には『会計士』という肩書の有無に関わらずタックスプランニング支援者に我々の基準を使ってほしい」という注釈が付けられています。
というのも、日本は特殊な国だからです。海外の多くの国では、会計士は税務業務も行うことができますが、日本は税務業務は税理士しかできないため、会計士は税理士登録をしないと税務業務ができません。かつては会計士も条件付きで税理士業務ができましたが、いわゆる業際問題によって政治的にこのような形で決着しました。
現実問題として、税務知識がないと会計監査などできませんから、公認会計士は税務業務を能力的にはできるのですが、無条件に会計士に税務業務ができるとすると税理士業界にとってはライバルが増えることになるので、制約を課した訳です(もちろん建前ではそんなことは言いませんが・・・)。
これに対して、弁護士は税務業務ができます。弁護士は法律の専門家なので、税法も法律の一部ということで、当然弁護士も税務業務ができるという理屈らしいのですが、実際には簿記などの会計知識がなければ税務業務はできませんから、弁護士は税理士にとっては脅威にはならないということで、放置しても問題ないということなのでしょう。(これを言い出したら、金融商品取引法や会社法も法律ですから、弁護士は会計監査もできる、ということになってしまいますね。法曹資格を取得すればオールマイティになってしまいます。)
今回のこの基準ができても、日本では、税理士と税理士登録をした会計士対象ということになると思います。