招集通知と有価証券報告書の開示のズレ

セブン&アイの巨額役員報酬が波紋 総会前に開示せず

セブン&アイ・ホールディングス(HD)のジョセフ・マイケル・デピント取締役への巨額報酬が議論を呼んでいる。株主総会の招集通知と総会後に開示された有価証券報告書(有報)とで、役員報酬の記述内容に乖離(かいり)が大きいためだ。有報を見なければデピント氏の報酬総額が巨額だとは分からない。既存ルールに沿った対応であるものの、投資家からは開示のあり方に疑問の声が出ている。

2024年6月18日 日本経済新聞

招集通知を規定する会社法は法務省が管轄する一方、有価証券報告書を規定する金融商品取引法は金融庁管轄という縦割りを解消して、企業の開示情報を一本化しないとなかなか難しいところがあります。

会計監査をしていても、決算短信発表までが勝負で、その後にゆっくりと招集通知をチェックし、そのさらに後で有価証券報告書をチェックする、という流れだったので、どうしても有価証券報告書は最後というイメージがあります。また、株主総会で報告・承認された決算をもって有価証券報告書が確定するという考え方から、有価証券報告書日付は株主総会後となっていたと思います。しかし、本来であれば、株主総会で報告・承認というのが重要な行事ですから、意思決定に重要な影響を与える事項は、有価証券報告書のドラフトで良いので、招集通知とともに提示するのが筋でしょう。

それぞれに目的が異なるから規定が異なっているのは当然、というのが教科書的な解答ですが、株主や投資家がそれで納得するかということとはまた別問題です。

企業も不信感を持たれないように、重要な情報については前倒しで開示すべきだと思います。

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