ChatGPTの活用と限界

ChatGPTはかなり便利です。わたしの場合は、アイデア出しや、ちょっとした文章作成の依頼なので、無料版のChatGPT3.5でも十分すぎます。これが無料とは驚きですが、いつまで無料かはわかりません。しかし、急激に性能がアップし、さらに少ないパラメータでも性能がアップしてきているので、今のPCがかつてのスパコン以上の性能になってきているのと同じように、いずれ超高性能生成AIが非常に安価に使うことができるようになるのでしょう。

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ChatGPTは壁打ちに最適

ChatGPTの強みはなんといっても壁打ちだと思います。人間の場合には、時間の都合がありますし、機嫌が悪いと聞き辛いということもありますが、ChatGPTには感情もなければ、時間の制約もないので、どんなにくだらない質問に対しても何時間でも嫌な顔をせずに付き合ってくれます。

とにかく疑問に思ったら聞く、回答が返ってきたらそれについてさらにAIと議論を交わす。これは、特にアイデア出しにはうってつけの使い方ではないかと思います。

プロにとって最も有益なツール

生成AIでは、プログラムのコードも生成してくれます。なので、プログラミングができない初心者にとっては福音だと書いている記事もありますが、そうではなく、むしろプロにとっての福音だと思っています。

というのも、出力されるものがすべて正しいとは限らないため、そのまま使っても動かない、セキュリティ的にはむしろ危険、ということがありうるからです。プログラミングに無知な場合、どこに問題があるのかすらわからず、出力されたものをそのまま使って問題が起きても対処できず、途方に暮れてしまうのがオチだと思います。

記事の出力にしても、記事の内容が正しいかチェックする必要があります。ある程度知識があれば、どこに間違いがあるかすぐにわかるので、ちょっとの修正で終わることが多いと思いますが、知らなければ調べなければならず、結局はそれなりに時間がかかってしまいます。

つまり、ある程度の知識がないと使いこなせない、というのが現状ではないかと思います。逆に、プロの場合には、知識が豊富なので、むしろドラフトを作成してもらえるのは大いに助かるでしょう。現に、私は大いに助かっています。

記事などを自分で書いていると、クリアな状況で見直すために、時間を置いてから推敲する作業が必要になります。これに対して、ドラフトが自動で作成されると、基本的にはチェックするだけで済みます。しかも他人の作ったものはアラがよく見えますので、より早く記事を完成させることができます。これは大きなメリットです。

なので、プログラミングや文章書きの初心者は、より切磋琢磨しないと、さらにプロに差を広げられてしまいかねません。プロの方が、さらに短時間で大量生産が可能になってしまいますので。

質問の仕方で回答の質が大きく変わる

これはAIに限った話ではありません。ポイントをついていない質問に対して的確な回答を得るのは難しいです。

結局何が聞きたいのか、よくわからない質問をされることも多く、「こういうことが聞きたいのですか?」とこちらが相手の意を汲んで逆質問しなければならないこともありますが、AIは人間のように気を遣ってくれません。

つまり、適切な回答を得たかったら、こちらの質問力を上げるしかないのです。

上手な指示を出すことができれば、ChatGPTは強力なツールになります。

なお、質問するにあたっては、自分の立場を明確にするのは非常に有効です。

良い翻訳を得たかったら

「あなたはプロの翻訳家です。〇〇をわかりやすく翻訳してください。」

コピーライティングを依頼する場合には

「あなたはプロのコピーライターです。〇〇のキャッチフレーズのアイデアを10個考えてください。」

生成AIとわたしたちの思考方法は根本的に違う

よく、AIは嘘を平気でつく、と書かれていますが、もちろんAIには嘘をついているという認識はありません。人間が作ったプログラムに従って回答しているに過ぎません。

そもそも生成AIと人間では思考プロセスが違っています。

基本的に、人間は、因果関係と相関関係で物事を捉えますが、生成AIは相関関係しか認識できません。つまり、生成AIにはなぜそうなるのか、原因と結果についての分析はできないのです。

もちろん、人間でもしばしば因果関係と相関関係を混同することがあります。因果関係があれば相関関係がありますが、相関関係があるからとって因果関係があるわけではありません。しかし、あたかも因果関係があるかのように錯覚することは、しばしば見られることです。

よくあるのが、分析の場面です。例えば、ある街のバターの消費量と、国際市場の金の価格に相関関係が見られたとして、バターの消費量が減ったから金の価格が下がる、というレポートを書いたら、おそらくその分析員はクビになるでしょう。しかし、これに近いことをやりがちです。相関係数は表計算ソフトで簡単に算出することができ、どのようなデータの組み合わせでも算出が可能です。そして、何らかの相関関係が見られることがあります。しかし、それは数学上は計算で出てくるだけの話であって、そこに本当の相関関係があるか、結果を導き出すのはあくまで人間に分析力にかかっています。

そして、そこにさらに因果関係があるかどうかについての結論を出すには、深い洞察力が必要となります。

ところが、生成AIにはそれができない、という致命的な欠点があります。あくまで相関関係が強い単語を結びつけて文章化しているだけなので、しばしば突拍子もない文章を出力することがあるのです。

回答にバイアスがある

これは学習データの問題でもありますが、例えば、日本の場合は女性の経営者や役職者は極端に少ないですが、だからといって女性が経営者や役職者に向いていない、という結論にはなりません。

男女間での職業の偏り、年齢による偏りというのはどうしてもありますが、例えば生成AIでは短絡的に「看護師=女性」という結論にしてしまう可能性があります。

このように、男女や人種、年齢による差別を引き起こす可能性がありますので、回答結果には十分に気を配る必要があります。これも、上記の生成AIは相関関係しか認識できない、弊害のひとつだと思います。

残念ながら情報が古い

ChatGPTの欠点としては、情報が古いことでしょう。学習データの作成には膨大なデータと計算コストがかかりますから、これは仕方ありません。そのため、現時点では過去1年のことを聞いても、答えてくれません。

ちなみに、ChatGPTに聞いてみると、

Q:過去1年で一番売れた商品を教えてください。

A: 申し訳ありませんが、私の知識は2021年9月までのものであり、現在の情報にアクセスすることはできません。過去1年で一番売れた商品についての情報は常に変動しており、それについては最新の販売データを提供できる専門のデータベースや情報源にアクセスすることが必要です。お住まいの地域や業界によっても売れ筋商品は異なることがあります。具体的な情報を入手するためには、販売データを収集または市場調査を行うか、関連する業界の報道などを確認することをお勧めします。

これは結構つらいものがあります。というのも、Stable Diffusionなどの画像生成AIのプロンプトを教えてもらおうとしても、画像生成AIが爆発的に広がったのがつい1年ほど前くらいからなので、ChatGPTは当然それを知りません。

そのため、ChatGPTに画像生成AIのプロンプト作成を指示できる、という記事を見かけますが実際にやってみるとかなり苦労します。

なお、CHatGPTにStable DiffusinやNovel AIについて質問してみましたが、当然ながら知らない、あるいはピントハズレな回答をしてきました。

文書化されていない知識は反映されていない

学習データは基本的にネットにあるものを利用しているワケなので、ネットにない情報は反映されません。例えば、私が人生で経験してきたことは、ネットに自分でアップしたもの以外はネットには存在しません。

図書館にある本もすべてがデジタル化されているわけではありません。

このようなネットにない情報というものは実は大量、というより想像すらできない、無限といっても良い情報量になります。ネットにある情報など、情報全体を地球としたら、それこそ砂粒一つに過ぎないかもしれません。

なので、本当に質の良い情報を得ようと思ったら、現地に行って確かめる、人から聞く、本で調べるといった地道な取材が欠かせないことになります。

CHatGPTで調べた情報は誰にでも手に入る情報なので、基本的には価値があまりない、という点には注意が必要です。

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