気になっていた書籍です。ようやく手に入ったので、早速読んでみました。
わたしの業務でも、AIは欠かせない存在になっています。特に、プログラミング、翻訳では必須のツールになっています。
確かに、この本にも書かれているように、判断を下すのは最終的には人間です。AIには決して判断はできません。
予測と判断の分離
すでにAIには分析や予測では勝てない分野もあります。しかし、その分析結果や予測に対して、どのようにアクションをするかの判断をするのは人間です。
ただし、分析や予測をAIに任せることで、パワーシフトが起きるというのは確かにその通りだと思います。かつては知識を持っているものが有利でした。昔であれば、村長(むらおさ)などの年長者に権威がありました。経験や知識があったからです。しかし、今の時代はそうではありません。知識はネットの方が優れています。そして、知識だけでなく分析や文書生成やまとめ、画像生成までこなすAIが出現し、知的労働ですら権威を失いつつあります。
これからはいかにAIを使いこなして、判断に活かしていくのかが問われます。
それだけではなく、本書を読んで感じたのは、責任の所在を曖昧にさせるリスク(使う人にとってはうまみ)についてです。
まるでAIが判断まで行っているように感じるところもありますが、それはあくまでAIがそう判断するようにプログラミングした人間がいるからです。
AIは言われた通りにしか実行できません。しかし、結果を受け取る人間は、まるでAIが判断したかのように錯覚を起こします。
これは判断をする側にとっては好都合です。責任の所在が曖昧になるからです。判断を間違えたとしても、AIに責任をなすりつけることが可能になります。つまり、二重権力状態を作り出すことが可能になります。
コストの削減ではなく、新しい利益の創出
本書を読んで一番役に立ったところです。営業をかける上で、自社製品がコスト削減に寄与する点をうたってもあまり成果はないが、新しい利益を創出する点を強調するとうまくいく可能性が高いとのこと。
確かにこれはそうだなと感じます。新しい利益を創出するという可能性の話は夢があります。
今はAIや宇宙への投資が盛んですが、これも夢があるからかもしれません。
イノベーションのジレンマ
生成AIの台頭によって、既存の大企業に勝てるチャンスが広がったとも言えます。というのも、イノベーションのジレンマが至る所で起きるからです。
既存の大企業は、既存のシステムで高度に最適化されています。それが逆に足枷になってしまいます。
その例として、本書では、ネットフリックスとブロックバスター・ビデオ、iPhoneとブラックベリーが取り上げられています。また、これ以外でも、インテルとエヌビディアが当てはまるかもしれません。
電気自動車もそうですね。電気自動車は従来のガソリン車とは構造がまったく違います。エンジンが不要になってしまいます。そうなると、エンジンに携わっていた人たちは職を失ってしまいます。
新しい技術を取り入れようとすれば、ある部署が不要になってしまうかもしれません。そのような不利益を被る人たちが抵抗勢力となってしまいます。
ルールとは意思決定からの解放
ルールとは、意思決定からの解放を意味します。青信号は進んでも良い、赤信号は止まれ、というルールがあるから、自動車の運転に秩序が生まれます。もしこのルールがなければ、交差点に差し掛かる都度、左右から車が来ないかどうか確認しなければならなくなります。交通ルールがあるから、その交差点を渡っても良いかの意思決定から解放されている、とも言えます。
しかし、全然車がいないのに、赤信号で止まらなければならない、という場面にもしばしば直面します。だからといって信号無視はできません。もし、AIが高度に発達すれば、信号機を最適化することが可能になるでしょう。もっと高度化すれば、個々の車に合わせることも可能になるかもしれません。そうなると、今度はルールから解放される、ということになります。
空港もそうですね。わたしたち庶民は、チェックイン、搭乗手続きの時間を考慮に入れて早めに空港に行く必要があります。そうなると空港で時間をつぶさないといけませんので、空港としてもレストランや売店などを充実させています。ところが、富裕層の場合はそもそも、空港で待たされるということはありません。プライベートジェットに乗り込んですぐに出発することが可能です。遅れたとしても待っていてくれます。
つまり、富裕層にとっては空港は乗り降りするところであって時間を潰すところではない、ということになります。AIによって個々人に最適化されてしまうと、空港はレストランや売店を用意する必要はなくなる、というジレンマが発生してしまいます。
学校教育も同様です。いずれは個々人に合わせた個別教育システムになるのかもしれません。
AIは勝者総取り
だからこそ、投資競争が激しくなっているとも言えます。早く始めるほど有利になるからです。AIはデータこそがすべてです。
データから学習し、フィードバックを得て、さらに学習する、ということを繰り返すことでAIはより優秀となります。つまり、早く始めないと追いつけないほどに差をつけられてしまいかねないのです。
AIのブルウィップ効果
ある一箇所でAIを導入したとしても、局所的なところで済むということはありません。たとえば、レストランで顧客の注文について、AIで予測することで、在庫管理をすれば、究極的には農家の出荷量にまで影響を及します。
でも、これは実は大野耐一氏によるトヨタのかんばん方式(ジャストインタイム)ですでに実施されていたことでもありますね。