AIを使いこなすのか、AIに支配されるのか

テクノ新世 もっと人間らしく(4) 人類が「AI語」を話す日

この思考、本当に私のもの?

著名プログラマーで作家のポール・グレアム氏は4月、メールに記されていたある単語に注目した。「詳しく調べる」「掘り下げる」という意味のdelveという動詞だ。「Chat(チャット)GPTで書かれた文章の兆候」という。

グレアム氏は米スタートアップ支援、Yコンビネーターの創業者でもある。同社で頭角を現し、後に米オープンAIを立ち上げるサム・アルトマン氏の才能を見いだした人物だ。

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「話し言葉では使わない」(グレアム氏)というこの単語を、AIはなぜ多用するのか。実はチャットGPTは開発時に、適切な受け答えを学ぶため人間と大量に対話の訓練をした。相手は時給2ドル(約320円)以下で雇われたアフリカの人々と報じられている。

英紙ガーディアンによると、delveはナイジェリアなどで頻繁に使われている。アフリカでの訓練がチャットGPTに影響を与えた可能性があるという。

2024年6月21日 日本経済新聞

これは確かに感じることがあります。ほぼほぼ自然な文章なんだけど、そういう言い方はしないよね、ということでAIの出力に対して若干の修正をすることはあります。

AIに限らず人間も、誰から教わったかによってアウトプットが変わってきます。ネットの情報から大量に学習したとしても、どうしても偏りが生じてしまいます。ネットにすべての情報がアップされていないからです。そのようなバイアスがかかった状況であることは認識しておく必要があります。

しかし、AIが生成したものが氾濫すると、それがデファクトスタンダードになる恐れはあります。AIが流行語を作ることになるかもしれません。

テクノ新世 もっと人間らしく(1)集合知VS偽情報

ウィキペディア創設者の再挑戦 世界中と連携、技術悪用防ぐ

投稿内容はネット検索に出てこない。ウェブサイト内に広告は一切表示しない。「いいね!」ボタンも送金機能もないSNSが2023年、ひっそりと公開された。見た目は地味だが、設立趣旨は明快だ。「正直さと信頼性が何よりも評価される場所をつくる」

Xへの対抗意識

立ち上げたのは英国在住のプログラマー、ジミー・ウェールズ氏。誰もが編集に参加できるウェブ百科事典「ウィキペディア」の創設者として知られる。人々が信頼を築くSNSという願いを込めて「トラストカフェ」と名付けた。

2024年6月17日 日本経済新聞

ウィキペディアは非常に参考になります。一方で胡散臭い情報もウィキペディアにはあり、一応「信頼できるかどうかわからない」という注釈が付いていることもありますが、全面的に信頼できないことも事実です。

オープンソースソフトウエアも集合知によって成立しますが、オープンソースにも問題がないわけではありません。一番の問題は責任の所在が曖昧ということでしょう。有志によるボランティアが基本で、参加者の好奇心と善意に頼っているというのが実態です。

ここに今後はAIが生成したものが入り込むことになります。

「トラストカフェ」の利用が伸びるのか、興味があるところです。

漫画、AI翻訳で世界同時配信 集英社や小学館が新興出資

集英社、小学館などの出版大手は漫画を翻訳する人工知能(AI)を手掛けるマントラ(東京・文京)に出資した。マントラは翻訳時間を従来の半分以下に短縮できる技術を持つ。調達資金で人員を3倍に増やし、翻訳精度を高める。

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一方、AI翻訳への感念の声もある。翻訳家500人超が加盟する日本翻訳者協会(東京・渋谷)は5日、「現時点でのAIによる翻訳は作品の二ユアンスや文化的背景、登場人物の特徴を十分に反映できる品質に達していない」と表明した。

上村魁副理事長は「翻訳者は作品の世界観を正しく伝えるための取材など様々な工程がある。翻訳工程の短縮だけが注目され、翻訳の質の下や労働環境の悪化につながらないようにしてほしい」と話す。

2024年6月25日 日本経済新聞

AIの出現によって翻訳業界も大きな影響を受けている分野です。わたしもAI翻訳には大いに助けられています。確かに商品の質を高めるためには微妙なニュアンスというものが大切になりますが、一方で、特に海外では、安ければ意味さえわかればそこまで求めていない、ということもあると思います。そこのバランスが難しいところだと思います。

翻訳業務の多くがAIに代替されるのは時代の流れとしては仕方がないのかな、と思います。

では、外国語ができなくても良いのか、というとそれもまた違うと思います。顔と顔を合わせて会話をするときに、いちいち翻訳機を通じてやるのと、自然に会話するのとでは印象はかなり違うはずです。外国語ができないよりはできたほうが良いのは確かです。

これは絵も同じですね。AIが絵を描いてくれるといっても、それはAIが学習した範囲内で出力したものです。AIが描いたものが氾濫してくると、バケツにインクを垂らすとインクが広がって均一になるように、エントロピー増大の法則で、さらに同じような絵ばかりが登場してくることが予測されます。そうなると、自分で絵が描けることが逆に強みになってくると思います。AIが描けるようなイラストしか描けないイラストレーターではダメですが、そうではないイラストレーターは悲観する必要はないと思います。

カスハラ対策はAIが承ります ソフトバンク、顧客向けに

生成AI(人工知能)などの先端技術を使い、コールセンター業務で顧客による迷惑行為「カスタマーハラスメント(カスハラ)」対策に取り組む企業が増えてきた。ソフトバンクは顧客の怒りの声を穏やかに変換する技術を開発。カスハラを疑似体験するツールも出てきた。オペレーターが働きやすい環境をAIがつくる。

「気持ち見せてくれないとSNSで言いふらすから! 顧客をないがしろにする最悪の会社ですよって!」。ソフト…

2024年6月19日 日本経済新聞

これはとてもいいですね。非常識な客には感情のないAIに対応してもらいましょう。のれんに腕押しで、怒っているのがバカらしくなってくるかもしれません。

AIは仕事をどう変えるか 渡辺安虎氏 東京大学教授

人工知能(AI)の進歩は、仕事にどのような影響を与えるだろう? コンピューターやインターネットといったIT(情報技術)が、人類の仕事に与えた影響を更に加速させる、というのが自然な発想であろうか。

しかし、最近発表された一連の研究成果は、正反対の影響となる可能性を示唆している。この話をする前に、まずはITの影響について簡単に振り返ろう。

2024年6月13日 日本経済新聞

わたしの場合、今のところ、生成AIが最も役に立っているのが、プログラミングと翻訳です。かなりの時短になっています。

絵は思ったような出力を得るためにプロンプトを調整したり、ガチャガチャのようにたくさん生成しないといけないので、実用としてはどうなのかな、と思います。文章生成もファクトチェックに時間がかかるので、思ったよりも時短にはなっていない気がします。

プログラミングは驚異的です。小さなプログラムなら一瞬で作ってくれます。しかも、きちんと動きます。ただし、何重にもなるループなどちょっと複雑になるとお手上げ状態になるので、そこは自分で作るか、シンプルな構造になるように工夫するか、いずれにせよ、プログラミングの知識が不可欠となります。

なので、分野によって、スキルの高い人にとって役に立つ道具になることもあれば、スキルの低い人にとって生産性が高くなることもある、ということで、現状ではどちらもありうることだと思います。

ナビが登場したことで、地図が読めなくても目的地に辿り着くことができるようになりました。でも、ナビに頼りすぎると遠回りさせられることもあります。この場合はナビを無視して車を走らせることがあります(わたしは頻繁にナビを無視するので、たまにナビが怒ってめちゃくちゃな表示をすることがあり、「おお、ナビにも感情があるのかな」と思ったりします)。

道具は活用するものであって、振り回されるものではありません。

AI進化のカギ「身体性」 ヒト型ロボットと融合で加速も

人工知能(AI)が人間と同じように考えることは可能か。「ChatGPT(チャットGPT)」をはじめ技術の急速な進化で、人間の知性を超える日は近いとの見方もある。現在の生成AIは自然な会話はできても、人間の質問に対して続く確率が高い単語を並べているにすぎない。自律的に物事を考えて判断するには、いくつかブレークスルーが必要だろう。

その一つになりそうなのが、生成AIとロボットを融合させる動きだ。

2024年6月16日

AIの限界はここだと思います。AIに感情はありませんし、痛みも感じません。そして、何よりも死の恐怖というものが存在しません。文字としての情報は持っていても、自分が死ぬ怖さというのを実体験として認識できるかというと、それはありえません。これは人間が作り出した道具すべてに言えます。

もし、車やスマホが自分の死を怖がっていると主張したら、かなりヤバい人と思われるに違いありません。

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