AIで特許調査や特許書類の作成支援を行うサービスがあるようです。
このような、専門家が行っていたサービスを民間がおこなおうとする場合には、当然ながら業法への抵触が問題となります。特許書類の作成支援についても、弁理士法75条に抵触する恐れがありますが、これについては、グレーゾーン解消制度による回答から、弁理士の監督下で実施される限りにおいて同条に反しないということで決着しているようです。
(弁理士又は弁理士法人でない者の業務の制限)
第七十五条 弁理士又は弁理士法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、特許、実用新案、意匠若しくは商標若しくは国際出願、意匠に係る国際登録出願若しくは商標に係る国際登録出願に関する特許庁における手続若しくは特許、実用新案、意匠若しくは商標に関する行政不服審査法の規定による審査請求若しくは裁定に関する経済産業大臣に対する手続についての代理(特許料の納付手続についての代理、特許原簿への登録の申請手続についての代理その他の政令で定めるものを除く。)又はこれらの手続に係る事項に関する鑑定若しくは政令で定める書類若しくは電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他の人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)の作成を業とすることができない。
確かに、特許調査で使えるとなると便利かもしれません。しかし、現状ではまだ精度の面で課題もあるとのことなので、あくまで参考にする程度なのかなと感じています。以下の論説で詳しく分析されており、とても参考になります。
「AIサムライ」では、ChatGPTを使って、質問に答えるだけで出願書類のドラフトが作れるようになるとのこと。もちろん、弁理士の監督下で行うことが条件となるので、あくまでAIがドラフトを作成し、弁理士が最終的に出願書類としてまとめる、ということになるので、自分ですべてできるようになるわけではないようです。この点には注意が必要です。
なお、出願書類の作成についても、正直なところ、どこまで精度良く作成できるのかは、個人的にはちょっと疑問に感じているところではあります。というのも、出願書類の形式としては整うかもしれませんが、特に「特許請求の範囲」については、かなり慎重に分析して書かないと、余計なことを書いて特許回避が容易になった、あるいは書くべきことを書かなかったので必要な権利を取り損ねた、ということになりかねないからです。ChatGPTがどこまで意を汲んでくれるものなのか、今まで使用した感じからすると、ちょっと疑問に感じてしまいます。
そうなった場合、誰の責任になるのか、ということになってしまいます。そのための弁理士法75条だと思いますので、あくまで弁理士の監督下での使用に限定し、最終的にはそのチェックした弁理士の責任、ということで決着したのだと思います。
でも、ドラフトをAIが書いてくれるのですから、弁理士先生の負担が減るのは間違いないと思います。