「AFURI」商標を巡る騒動

神奈川県伊勢原市の酒造メーカー「吉川醸造」が、ラーメンチェーン店「AFURI」(AFURI社)から「AFURI」の商標を巡って提訴され、商品の完全廃棄処分を要求されているそうです。お互いに弁護士を入れて協議したものの、不調に終わり、結果的にAFURI社が商標の使用差止や損害賠償などを求めて東京地方裁判所に提訴したそうです。

確かに、AFURI社は2020年4月に、お酒の登録区分33類で「AFURI」の商標を登録しています。(明細では、「清酒,焼酎,合成清酒,白酒,直し,みりん,洋酒,果実酒,酎ハイ,中国酒,薬味酒」)

さらに、2023年3月には、同じ33類で、「あふり」の商標を登録しています。(明細では、清酒,焼酎,合成清酒,白酒,直し,みりん,洋酒,果実酒,酎ハイ,中国酒,薬味酒,日本酒,アルコール飲料(ビールを除く。))

他にも、いろいろと登録しています。(特許情報プラットフォームで簡単に見ることができます。)

しかし、AFURI社はラーメン店で、ホームページを見る限りラーメンしか扱っていないようです。あまりにも広く商標を取り過ぎており、使っていない商標は無効になる可能性が高いと思われます。

ちなみに、2020年4月の登録では、33類以外にも、12類の区分で「マグカップ,食器類,デンタルフロス,ガラス基礎製品(建築用のものを除く。),かいばおけ,家きん用リング,電気式歯ブラシ,化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。),おけ用ブラシ,金ブラシ,管用ブラシ,工業用刷毛,船舶ブラシ,家事用手袋,ガラス製包装用容器(「ガラス製栓・ガラス製ふた」を除く。),陶磁製包装用容器,ガラス製栓,ガラス製ふた,プラスチック製の包装用瓶,鍋類,コーヒー沸かし(電気式のものを除く。),鉄瓶,やかん」、25類の区分で「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,キャミソール,タンクトップ,ティーシャツ,和服,アイマスク,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ナイトキャップ,帽子,ガーター,靴下留め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類,げた,草履類,仮装用衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」及び「ウインドサーフィン用シューズ」を除く。),乗馬靴,ウインドサーフィン用シューズ,運動用特殊衣服(「水上スポーツ用特殊衣服」を除く。),水上スポーツ用特殊衣服」とあまりにも広すぎます。これでよく審査が通ったなと感心します。

おそらく対抗措置を講じたのでしょうか、吉川醸造としては、今年の3/14に自社の商標を出願しています。ただし、拒絶されて意見書を提出した段階で、まだ登録には至っていません。

吉川醸造としては、

  • 先使用権を主張
  • 商標権無効審判の請求

でいくという方法も考えられます。裁判となると、時間とコストと精神的負担がかかってしまうので、やはり最初から防衛のために、事前に商標登録しておくべきだったかもしれません。AFURI社が登録しているのが、つい最近なので、争う価値は十分にあると思います。

それにしても、炎上している分も含めてむしろAFURI社にとっては、ビジネス的にはどうだったのだろう、と思います。特に競合でもないのになぜここまでこだわるのか、何かきっかけがあったのか、それともパテントトロールのようなことをしようとしたのか、その理由が気になります。他の「AFURI」(アフリ)という呼び名を使った商品を扱っている企業は気をつけた方がよいかもしれません。

もっとも、AFURI社としては、多くの商標が無効になった上に、イメージダウンでラーメン店も傾いたら洒落になりませんけど。

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