粉飾は最後は破綻します

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グレイステクノロジー(株)粉飾決算の調査報告書は読み応えあり

グレイステクノロジー(株)の調査報告書をダウンロードして読んでみました。これは一読の価値があります。ページ数が多いですが、非常に読みやすく、よくまとめられているので、どのような経緯だったのか、手に取るようにわかります。

警察の捜査とは違って強制力がないので、関係者の協力が得られなかったり、当事者が亡くなっていたり、といった困難さがありますが、よくここまで調べたと思います。

気になったのは、A氏、B氏と氏名を伏せていますが、報告書の内容が具体的すぎるので、ちょっと調べれば誰かはすぐにわかってしまう点。伏せる必要があったのか、疑問です。

東証一部上場企業とのことですが、新聞を読むまで知りませんでした。上場してはいけなかった会社の一つだと感じました。上場したがゆえにおかしくなってしまった会社はたくさんあります。

報告書を読むと、A氏のプレッシャーの苛烈さが伝わってきます。A氏の心労も大きかったことは容易に想像でき、それが寿命を縮めてしまったようです。

創業者のA氏が亡くなったことで、粉飾が破綻してしまったようです。ホームページのリリースを読むと、死の直前の計画で巻き返しを図るところだったようですが、その矢先の死でそれも不発に終わってしまいました。

売上高の過半が架空という異常事態で、本来であれば、売掛金がどんどん膨らんでいくところですが、なんと、役職員が自社株売却によって捻出した資金を振り込み、売掛金を回収したかのように偽装していたとのこと。

この自社株売却益については、当然税金がかかるので、個人が負担したことになるが、手取りを振り込んでいたということでしょうか?

架空の売掛金を回収するために自社株から資金を捻出するということは、株価が下落してはまずいことになります。そのため、さらなる粉飾を積み重ねるという悪循環に陥ってしまったようです。

取引先からの入金を装うために、取引先の地元まで出向いて、そこから振り込むという周到さで監査法人をまんまと騙したわけですが、手口自体は古典的と言えます。

大和証券事件で担当者が資料を偽装したように、バレないために偽装する事例はいくらでもあります。

騙されたとはいえ、監査していた監査法人の関係者は大変だと思います。しかし、売上の過半が架空ということになると、どのような監査手続をしていたのかが気になります。
偽の顧客のメールアドレスを作って、そのメールアドレスで監査人とやり取りをしたり、残高確認状を偽造したり、あの手この手で騙していたようです。

この会社はマニュアル制作を請け負う会社のようです。そのため、成果物の確認を求めたようですが、納品物をすり替えられ、結果として騙されたようです。でもこれはちょっと不可解なところがあります。日本語マニュアルを英語に機械翻訳をかけただけで成果物と言われて、「はいそうですか」では監査になっていないと思います。メールアドレスにしても、アドレスに違和感を感じたりしなかったのか?納品書、受領書といった書類さえあれば売上計上できると経理は考えていたようですが、監査人はそれを鵜呑みにしていなかったか。まあ、このあたりは、今後会計士協会のレビューが入るとは思いますが。

職業的懐疑心と言われますが、ほとんどの会社は真面目なので、どうしても性善説に傾きがちです。せいぜい見解の相違で、悪意を持って騙すということはほとんどありません。なので、そういうところばかりを担当すると、嗅覚が鈍ってしまうかもしれません。

  • 粉飾は割に合わない。
  • 無理に上場しない。

急性期病床「名ばかり」3割

「急性期病床「名ばかり」3割」(2022.6.19 日経新聞)

これは、かなり前からその存在は知られていました。なので、何を今さら、という感じがします。

病床をフル稼働させるために、まるで循環取引のように、患者を病院間でぐるぐる回すことから、「ぐるぐる病院」と呼ばれている病院もあるくらいです。

病院も経営しなければならないので、できるだけ点数が高く取れる方法を採用しようと悪知恵を働かせています。

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